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【徹底解説】日本と欧州の移民問題|私たちはなぜ「共生」に失敗するのか。イタリア在住13年の筆者が綴る、移民問題の虚像と実像

世界中で「移民が引き起こす社会不安」が叫ばれています。しかし、人類の歴史は移民の歴史でもあります。アフリカで誕生した私たちがこれほど世界に広がったのは、より良い生活環境を求めて旅をしたからです。

私は13年前からイタリアで働き、税を納めています。言うなれば私も「移民」の一人です。今、日本でも欧州でも、移民を巡る軋轢は「治安の悪化」や「文化の破壊」として語られ始めています。なぜ、共生はこれほどまでに困難なのでしょうか。統計データと、私の友人ミリーの物語から、この問題を深く掘り下げてみたいと思います。

移民問題を考える前提:文化的・経済的分断

二つの異なる人の集まりが交わった際に生じる分断は、放置するとやがて生活習慣やモラルの認識の相違からトラブルに発展し、治安の悪化を含む深刻な社会問題を生みます。現在の日本では、移民が日本の社会の破壊者であるように捉えられ始めています。

興味深いデータがあります。イギリスやベルギーで2024年に誕生した新生児に付けられた名前として一番多かったのは「Muhammad」でした。欧州では、数十年後には人口比率が逆転し、その社会や文化を大切に思っていない人物が多数決で国政を動かす「移民の中から生まれる」事態が懸念されています。

「ご先祖様が眠るお寺が、イスラム教のモスクに改築される。それを『時代の流れだから仕方がない』と思えるかどうか。」

— 差別やナショナリズムとは一線画す、本質的な問い

移民の種類:背景に潜む多様な事情

一言に移民と言っても、その背景により種類は異なります。

  • 1
    労働移民 就労目的。専門職に就き、現地の言葉を話し、平均以上の納税を行う人々も多い。
  • 2
    人道移民(難民) 紛争や迫害で移動を強いられた人々。社会に統合する試みがなければ孤立し、不安要素となり得る。
  • 3
    不法(不正規)移民 正規手続きを完了できず残り続ける人々。低賃金の単純労働に就き、独自のコミュニティで社会と分断されやすい。

日本における移民の実態:2025年最新データ

出入国在留管理庁の資料に基づき、現在の日本の立ち位置を整理します。

📊 2025年6月末時点の在留外国人数

正規の在留外国人数は395万6,619人(前年末比5.0%増)。

  • 国別構成: 中国(90万)、ベトナム(66万)、韓国(40万)、フィリピン(34万)、ネパール(27万)
  • 在留資格: 永住者(93万)、技術・人文知識・国際業務(45万)、技能実習(44万)
  • 不法在留者(2025年1月): 合計7万4,863人(ベトナム、タイ、韓国が上位)
  • 難民申請(2024年): 1万2,373人(前年比10.5%減)。認定率は約1.5%。

日本の難民認定率が低いのは、申請者の多くが実際には就労目的である地理的要因が大きいです。一方で、政府は「人道的な配慮」による在留許可(2022年は580人)という形で、制度の隙間を埋める運用を行っています。

ヨーロッパの苦悩:2010年以降の「移民危機」

欧州では2005年を境に、中東や北アフリカからの流入が激増しました。

📈 難民申請数の推移(EU域内) 2009年の約26万件から、2015年には約130万件へと、わずか数年で5倍に膨れ上がりました。これは制度設計上の想定を遥かに上回る規模でした。

「アラブの春」の功罪:今世紀最悪の人道危機へ

この激増の背景には、2010年にチュニジアで始まった「ジャスミン革命」からなる「アラブの春」があります。路上で果物を没収された青年モハメド・ブアジジの焼身自殺が、独裁政権への怒りに火をつけました。

しかし、シリアでは民主化運動が複雑な内戦へと姿を変えました。アサド政権、反政府勢力、ISIL、さらには米仏・露イランの軍事介入。誰が何の目的で戦っているのか判別不能な混乱の中で、40万人以上が死亡し、シリア人口の半数を超える1,000万人以上が難民となりました。

2024年にアサド政権が崩壊してもなお、治安の不安定さやインフラの不備により、彼らは自国に帰ることができず、難民生活を続けざるを得ないのが現状です。

まとめ:共生できなかった事実と、その先にあるもの

かつて、欧州も日本も安い労働力として移民を歓迎しました。しかし、彼らを社会の一員として成功させるビジョンは欠落していました。日本政府も「実習期間が終われば帰る」という杜撰な制度設計のまま、彼らを底辺層に置き去りにしてきました。

私にはミリーというエジプト人の友人がいます。ミリーは、エジプトから地中海を小さなボートに乗って命懸けで渡ってきた難民でした。20年ほど前にミラノに辿り着き、あるレストランで雇われることになりました。そこで彼は誰よりもよく働き、イタリア語を習得し、オーナー夫妻から「息子」のように愛され、ついには引退するオーナー夫妻から店の名前とレシピを譲り受けました。店舗自体はオーナー夫妻により売却されたため、ミリーは別の場所に店舗を構え、レストランの名前とレシピと調理器具、そして常連客を譲り受けました。ミリーのレストランがオープンしたとき、インターネットの大手レストラン検索サービスに、元のオーナー夫妻から「ミリーが私たちのレストランの歴史を繋いでくれる」という趣旨のとても温かいメッセージが寄せられていて、目頭が熱くなったのを覚えています。

私はきちんとビジネスで使えるイタリア語を話していますが、実はミリーは私よりもイタリア語が上手です。このことからも、ミリーが並々ならぬ努力をしてイタリア社会で信頼を築き上げてきたこと、そして彼がイタリア語とイタリアの文化を愛していることが容易に理解できます。

私を含む常連客は、新しいミリーの店に今も通い続けています。ミリーのレストランはオープンしてから間も無く6年が経ちます。ミラノには多くのレストランがありますが、ミリーの店のように優れた素材の良さを素直に活かし切った純粋な魚介系イタリアンと、気取らないけど素晴らしいチョイスのワインを楽しめるレストランは、ミラノでもそう多くはありません。だからミリーのレストランは常に繁盛しています。常連は相変わらずそこに通っているし、常連に連れられてやってきた新しいお客さんもまた、常連になってしまいます。

「安心や豊かな生活は誰かから与えられるものではなかった。社会のルールの中で戦って、信頼と経験を積み重ねるように少しずつ獲得するものだった。」

今、私たちはこの移民をめぐる問題への完璧な解決策を持っていません。何よりも、数の問題は絶対にコントロールしなければなりません。少数ではコントロールが可能でも、増えすぎるとコントロールが効かなくなります。そして移民の質、というものを考えたとき、残念ながらどうしようもないのが大勢いるのが事実なのですが。けれどもミリーがそうであったように、社会と文化への理解と敬意を持ち、知的に一歩一歩、信頼を築き、社会の一員であることを証明し続ける人材も実際に存在するのです。

最後に、地球上のあらゆる国や地域には固有の歴史や文化があり、それらは守られなければならないと私は思っています。それを忘れてしまうようでは、人間はいつか自分が人間であることすら忘れてしまうでしょう。その国の歴史や文化の中には、様々な困難を乗り越えた経験や戦争の教訓が多彩に織り込まれています。だから私たちは歴史や文化を尊重し、その国に生きる人々を尊敬して人間であることを証明するのです。

地球上には、戦争をしたくてたまらない人が大勢います。壊す人と殺す人、そして生み出す人と創る人がせめぎ合うこの世界で、1日でも早く、誰もが移民にならなくても良い日が来ることを待ち望んで、このレポートを終わります。

データ引用:出入国在留管理庁 Webサイト
🌿 思考をさらに深めるために

「自由」と「無法」は違う。ミラノの街角で感じた、現代社会の歪み。 「義務」と「責任」をないがしろにして、ただ「自由」と「権利」のみを主張することに意味はあるのか?