私たちは日々、たくさんの判断を下しています。その判断の多くは強く意識することなく「一瞬」で行われます。その一瞬の判断を支配しているのが、「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」だとしたらどうでしょうか。特に責任あるリーダーにとって、このバイアスはチームや部下との関係を停滞させる毒にもなれば、使い方次第で自分を護る武器にもなります。この記事では、リーダーが抱える人間関係の問題を「バイアスとの向き合い方」という切り口から考えます。
- 脳が「省エネ」のために引き起こすバイアスの正体
- ビジネス現場で致命的なトラブルを招く10の主要バイアス
- 責任ある立場ほど陥りやすい「多忙」と「成功体験」の罠
- 「多様性」という言葉が招く「個性の去勢」への危惧
- 直感を否定せず、感性を正しく届けるための「護身術」
バイアスは「脳の生存戦略」である
「思い込みを捨てろ」という言葉は、自己啓発の世界ではよく耳にするフレーズです。しかし、生物学的に見て、思い込みを完全に排除することは不可能です。なぜなら、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)は、私たちの脳が生き抜くために編み出した「省エネ的判断方法」そのものだからです。
例えば、信号が赤になれば無意識にブレーキを踏みます。これは「赤信号=止まるべき」という強力な思い込み(学習された判断)があるからこそ、思考のコストをかけずに命を守れるのです。これをいちいち「なぜ赤なのか?」「今止まるべき理由は?」と論理的に考えていたら、現代社会は立ち行きません。
しかし、対象が人間であったり、複雑な業務上の事象になったとき、この「省エネモード」だけでは対処が困難になります。けれども忙しさにかまけて「システム1」のまま人に対する評価を下してしまったり、問題解決の初動を行ってしまうと、人やトラブルの本質をしっかりと見ることが出来ずに、チームの信頼を失うことになりかねません。
ここで私たちが理解しなければならないことは、アンコンシャス・バイアスつまり「思い込み」は決して悪いことではないということです。ただ何かの判断をするときに、これは思い込みに従っていい事例なのか、それとも少し時間をかけてじっくりと判断した方がいい事案なのかを判断する能力がリーダーには必要なのです。
現場を歪める10のアンコンシャス・バイアス
主要な10のバイアスを整理します。これらを「知識として持っておく」だけで、いざという時の判断材料になります。
忙しいリーダーが直面するスピード感への重圧
実は頑張っているリーダー、そしてプライドの高いリーダーほど、最もバイアスに依存しやすくなってしまいます。それ自体は悪いことではないのですが、問題は自分がバイアルに頼りがちになっていることに気づいたり、この判断はバイアスに委ねていいのかダメなのか、その判断がだんだんと難しくなってしまうのです。その原因は主に2つです。
以上の2点を踏まえた上で、現代社会のリーダーが知っていてもなぜバイアスとの付き合い方が下手になってしまうのか、そこにあるジレンマを私なりの視点でお伝えしようと思います。これは私の実体験ですが、リーダーである自分自身も部下たちからの評価の対象になっている、だから素早く的確な判断をしなければならない、という暗示にかかり、常に重圧を感じていました。
しかしある時、気がつきました。そんなに急いで判断をしなくてもいいのではないかと。全てをその場で決めてしまわずに、判断を2つ以上の段階に分け、その場でその場で指示出来ることはする、そのほかは少し考えたり、他の関係者に話を聞くなどして質の高い判断をすることを心がけるようにしました。もちろん全ての事案でこの方法をするわけではなく、まずは目の前の問題がどのようなプロセスで判断をするのが最適化を判断するようにしました。
大切なのは判断のプロセスを自分で決めること
マネジメントの勉強をしていると、「仕事を持たないのが鉄則」「仕事はすぐにリリースする」ということがよく言われます。他の担当者に仕事を振りわけるというのが仕事を溜めないことの真意であり、組織を停滞させることなく動かし続ける秘訣ですが、自分の部下に優秀なリーダーが10人もいればそれは可能でしょう。
しかし優秀なリーダーが10人もいる組織とは、少なくとも100人以上の従業員がいる中規模以上の組織に限られます。通常の中小規模の組織においては、リーダーも現場に関わらなければならないし、仕事を降りたくてもその振り先がないことがしばしばです。だから、現場に関わるリーダーは忙しくなってしまうのです。自分が所属する組織の状況や自分の能力に合わせて、どのようなプロセスの判断を用いるのがいいのかを判断できることが、本当に強いリーダーの条件のように思います。
大切なことは組織を
しっかりと方向づけすること、そして自分自身や部下の「個性」を活かしつつ、判断を間違えないリーダーへと自分自身が成長を続けることです。
- 研ぎ澄まされた経験はバイアスという「直感」になる。
- バイアスによる「評価」をすることには「不適切」を生むリスクがある。
- バイアスの存在を自分の中に認めつつ、どのような判断プロセスが重要かを判断することが重要。
結論:バイアスは「消す」のではなく「乗りこなす」
アンコンシャス・バイアスは、決して「悪いもの」ではありません。それは私たちが人間として機能するためのOSの一部です。そして、多くの必要がないバイアスは時間をかけて対話を重ねる中で、自然と消えていくものです。
大切なのは、自分のバイアスに無自覚なまま暴走することではなく、「自分にはこういう色メガネがあるかもしれない」と一歩引いてメタ認知する余裕を持つことです。自分の「色(個性)」を自覚していれば、他者の色を塗りつぶすこともなくなります。
- バイアスは生存に必要な機能であり、消すことはできない。
- 多忙と成功体験が、リーダーの判断を「雑」にする。
- 直感は「高度に圧縮された経験」であり、否定してはいけない。
- バイアス管理は、自分の個性を社会に適合させるための「技術」である。
常に異なる視点を持とうとし、時々一歩引いて物事を振り返る。その「柔らかな姿勢」こそが、あなたの人生と仕事を少し楽にし、あなたの真の実力を周囲に浸透させる鍵となるはずです。
「上司はわかってくれない」「部下は動かない」はなぜ起こるのか。組世代や個性の異なる他人が共通の目的のために働く組織になるためには何が必要なのか。「社風」ではなくもっと本質的な 「企業文化」 の重要性と作り方を考える。
あなたは人生の手触りを大切にしていますか?
































